これから記す話はとても不確定で未確認な事柄である。話半分で聞いてもらいたい。

 

統合失調症は治るのかもしれない

統合失調症という病気がどんなモノであるかについては、お世辞にも世間に知られているとは言いがたい状況だ。だが患者本人にとっても、自らの病気が一体何であるのかを理解する事は難しい事だ。統合失調症の症状とその人が陥っている状況は、人により様々であり、一括りにできない。それをあえて強引に3タイプに分類したいと思う。

一つ目のタイプは破滅的な状況に陥っている重度の患者だ。世間でイメージされる精神障害者像はここから来ている。とても残念な事だが、こうなると投薬で症状を抑えつつ、一生を病院で過ごしてもらうしかない。もう一つのタイプは中度の患者で、発症時は酷い苦しみを味わうものの、適切な服薬を続ければ予後が良く、寛解を目指せる人たちである。

統合失調症患者の最大の目標が、この『寛解』というモノだ。寛解とは、病気の症状がなくなり、再発を防ぐ為の服薬は継続するものの、最低限の維持量で健常者と同じように社会生活を送れるまでに回復した状態のこと。統合失調症患者の中で、再発せず『寛解』を維持できる人は多くない。それでも患者にとっては、同じ病気に罹り一生を病院で過ごす人たちがいる以上、何としてでも目指さなければいけない大目標なのである。

だがここへ来て、まるで治ったのではないかと思えるような良好な状態を保ててる人たちが、例外的にではあるが、僅かに出て来たようだ。この人たちを3つ目のタイプに分類し、本項で考えたいと思う。

今までは医療も福祉も、統合失調症を治る事のない病気として扱って来た訳だが、もしかしたら治癒が可能な病気である可能性が現れた訳だ。興味深い。

 

第二世代の抗精神病薬を超長期で服薬

私はこの現象を考察していて、一つの仮説を考えた。それは『第二世代抗精神病薬の超長期に渡る服薬の成果』である。

第二世代の抗精神病薬の登場は、統合失調症の治療においてとてもインパクトの大きいものだった。この第二世代は非定型抗精神病薬に分類され、今では治療の主軸としてデファクトスタンダードの地位を築くまでになった。それまでの薬は主に病気の症状を抑えることが全てであって、治す為の薬ではなかった。それに対し、第二世代と呼ばれる非定型抗精神病薬は、病気の症状を抑えるだけではなく、安定した回復を可能にし、患者を寛解に導くことができる唯一の選択肢として画期的だったのだ。だから今まで、医師や製薬会社は、患者が寛解したとしても再発防止の為に服薬は必要だと考えていたし、それは正しい判断だった。

その後、第二世代抗精神病薬が登場してから二十年以上の月日が流れた訳だが、この薬を十年単位で服薬した患者がどうなるのかは、実のところ製薬会社自身でさえ知らない。当然何のデータもない。だが現実に、超長期で服薬を続け、未知の領域に踏み込んだ患者たちが大勢いる訳だ。

統合失調症には、前兆期・急性期・休息期・回復期がある。病状はそれぞれのステージを進み、次第に症状は良くなっていく。この回復期の事を寛解と呼んで皆が努力し目指してきた訳なのだが、今まではどこまで良くなっても一生回復期のままであった。なぜなら常に再発のリスクが存在し続けるからだ。

だがもしかしたら回復期のその後に『治癒』という夢のようなステージが存在するのかもしれない。そしてそれを可能にするのが第二世代抗精神病薬の超長期服薬なのかもしれない。統合失調症という病気にはよく分からない部分が多く、統合失調症という病気を、医師たちは近代医療が芽吹いてからも数百年もの間治すことができなかった。だが寛解を超える寛解を達成している人が僅かながら(超レアケース?)でも存在する以上は、この事について詳しく検証してみる必要があるように思う。

 

薬は一生飲み続けなければいけないのか?

ここで議題にしている3つ目のタイプの人たちは、長い期間をかけて減薬し、自分に最適な維持量を見つけ服薬を継続している。だが、彼らが減薬が可能だという事ならば、脳内で起こり発症の原因となった脳内の異常(ドーパミンを始めとする神経伝達部質の異常)は、永久に続く訳ではなく、条件が揃えばどこかで収束していくのではないかという疑問が湧く。

陽性症状もなく、陰性症状も軽微な安定した状態で日常を過ごした患者たちは、病気の魔力から解放されている。その安定した日常が長期間続くなら、その期間に脳神経は適切に再構成(知・情・意の統合?)され、脳内の異常活動が収束するのではないか。

あくまで超長期の服薬という条件は付くものの、薬をなくしても問題のないステージがどこかにあるのかもしれない。症状が無く、薬が不要で、再発しないのであれば、彼らはもう精神障害者ではない。自分の一生が精神障害者として終わるのか、いくらかでも健常者として生きれる可能性があるのかという問題は、患者にとってとても重要な問題だ。私以外にも誰かしらがこの問題に気づいている筈だ。この問題が解明される事を切に願う。