断薬中に現れる退薬症状というのは、言ってみれば脳神経の暴走です。特に神経伝達物質であるドーパミンの暴走は強烈です。私も断薬時に様々な症状が出ました。一例を上げておきます。
- 寒気
- 不眠
- 身体の緊張状態が続く
- 呼吸が苦しくなる
- 食欲がなくなる
- 自律神経異常
- ふわふわ目眩
- 視覚に違和感が出る(瞳孔の異常?)
- 性欲亢進
統合失調症にはドーパミン仮説という解釈の仕方があります。ドーパミンが出すぎれば幻覚や妄想などの陽性症状が、出なさすぎれば意欲減退やうつ症状などの陰性症状が出るのです。抗精神病薬ではドーパミンレセプタをブロックすることで陽性症状を抑えます。ですが薬があまりに効きすぎると脳は極端に沈静化してしまい陰性症状が出てしまいます。そこをうまい具合に釣り合いが取れる薬の維持量を探るのが治療の一番の目的となります。
ですが多くの場合は多剤処方により薬が効きすぎた状態になっているようです。この場合は脳が過度に沈静化してしまい一日中何も出来ずに過ごす日々が続きます。陽性症状を抑えれば生活上の危険を減らすことが出来るのは確かなので、多くの場合、治療者は過度の沈静化もやむを得ないと考えているようです。
鎮静作用が強いとQOL(生活の質)が落ちてしまうものの、患者にとってのメリットとデメリットのバランスから、治療者が多剤処方を解消することに消極的になるのも理解できます。
何も出来ずに一日が終わるというのは我々にとってはとても辛いことです。なので薬を断薬してある程度は動けるようになりたいと願うのは自然なことなのです。しかし全ての薬を断薬する必要はありません。多剤処方を解消し、処方をシンプルにすること、それと柱となるメジャートランキライザー(強い薬)をしっかり時間をかけて選定することが何より大事です。
私がマイナートランキライザーを断薬していた時、その退薬症状を生み出していた原因は以外にも自律神経の異常だったように思います。訳の分からない症状が次々と襲い掛かってくる中でいろいろな対処療法を試しましたが、その中で自律神経を意識したものがとても効果がありました。お風呂で温まったり、あったかい甘酒を飲んだり、ストレッチをするなどがそうです。高ぶった交感神経を落ち着かせ、なるべく副交感神経が機能するように、それを身体に対してアプローチしていくことで、退薬症状をかなり和らげることが出来ました。自律神経とドーパミンの間には何かしらの関係があるようです。