止むを得ず長期間処方し続けている


さて、長期の服用を避けるべきだとされているベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠導入剤が、気が付けば数年単位で処方され続けている事があるのはなぜなのでしょうか。これについて『医師に依存や離脱症状の知識がないからだ』などと医療不信を訴えるのは時期尚早です。

これは製薬会社と医師の立場の違いによることから起こっている問題なのです。

製薬会社が新薬を売り出すということはとても大変なことです。製薬会社は、長期にわたる臨床試験を何度も何度もお金をかけて繰り返し、薬剤の安全性と副作用などの影響を長期間に渡って吟味します。製薬会社にとって重要なのは、あくまで薬理学的な正確さであり、それをまとめたのが添付文書という形で結実する訳です。

一方、医師は別の視点を重要視します。医師の仕事というのは、患者の訴えを聞き、その苦しみを取るために薬を処方することです。特に精神科領域では患者の病気に対して直接働きかけられる効果的な手段は投薬しかないのです。医師は一人の患者に24時間付き添って看病し続ける事など出来ません。なので医師は限られた時間から患者の病状を見極め、患者の不調を減らし、QOL(生活の質)を上げてあげる事が第一だと考えます。

これらの事情を考えると、医師は薬の危険性を知っていても止むを得ず処方し続けざるを得ないのだという事がわかります。将来のリスクよりも今のリスクを減らすことに専念しているという訳です。医師もベンゾジアゼピンの依存性や退薬症状をちゃんと知っています。ただ、製薬会社と立ち位置が違うので薬の解釈も変わってくるのです。

それと、長期間の処方が継続しているという事は、ひとえに患者である私達自身が長期間不調を訴え続けたという事に他なりません。本来我々は、薬を安全に使える数ヶ月間の間に、集中して問題を解決し、病状をコントロール可能なレベルまで上げる必要があったのです。その上で、ベンゾジアゼピン系の薬が一度処方されたのであれば、それを止めるところまでセットで治療計画を練らねばならなかったのです。医師も患者もそれを怠ったのが悲劇の始まりだったということです。

もし、断薬の苦しみにある時に、薬を恨み、医者を恨み、『医療不信』や『現代医療の否定』のような妄想じみた事を考えてしまった時などには、ここまで書いた話を思い出してみてください。医者は悪くないのです。それは自分の病気や薬に対する認識不足、無知から来るものなのだと、きつく自分を戒めておかなければなりません。

🔙 統合失調症サバイバー

投稿者:

長門志気

統合失調症で苦しんできたが、今は全ての症状が無くなり、ようやく穏やかな暮らしを送れる様になった。今後は衰えた体力と知力を取り戻していきたいと思う。統合失調症 / 禁煙・減薬継続中 / 放送大学・全科履修生 / 将棋初段 / Ingress RES A8 / Pokémon GO TL27