今でこそ平和な日常を送っているが、私の病気の初期は地獄であった。ただのひきこもりと化した人生に苛立ち毎日のように荒れて暴れた。なぜ自分ひとりだけが社会から取り残されてしまったのか、絶望と怒り、世の不条理と世間への妬み、そういったものが常に溢れかえり爆発した。
終いには母の一言一句が全て癪に触り、座布団でばすばす叩くようになった。母は包丁で防衛する。弟は隣の部屋でじっと耐えるが、さすがに限界がある。弟も襖をばすばす叩く。怒り狂っている最中の私は我を忘れて「電気ポットの湯を頭からあぶせてやる」と宣言。母は必死で止めた。結局最悪の自体は避けることができた。
もしあの時あの一線を越えてしまっていたら、弟は全身やけどで悪くすると死んでしまっていたかもしれない。一生消えぬやけどの痕が残ったかもしれない。我が家は幾度もそういった修羅場を経験したが、私は一度もその一線を超えることはなかった。だから今があると言ってもいい。