私が引きこもりになった当初、多くの人が一様に同じような質問を私に投げかけた。「家で何やってるの?」とういのがそれである。その答えを皮肉にもCOVID-19による自粛生活を余儀なくされた人たちは知ることになったようだ。
答えは「何もしない」が正解。
そもそも家というのは何かをする所ではない。身の回りを片付けたり、食事を作ったり、家族と会話をしたりするところが「家」なのである。つまりこれといったことは何もやらない。やるところではない。だからかつての私に多くの人が投げかけた「家で何やってるの?」という質問はその質問自体がそもそも変なのだ。
でも多くの人は自分が変な質問をしているということに無自覚だった。
彼らからすれば「何かをする」ということは「働く」と言うことであり、この社会では「働く」ということに関して人々の間に一種の強迫観念のようなものが渦巻いている。それは勤労が国民の義務とされている以上仕方のないことなのかもしれないが、少々行き過ぎているきらいはある。
で、コロナ禍で外出制限が出された時なのだが、多くの人たちが断捨離をし始めた。断捨離と言っても、実際はほとんどの人がただ家を掃除しているだけだったが、彼らの基準からするとただ掃除しているだけでは何かをやったということにならない訳なので、わざわざ「断捨離」というもっともらしい言葉を使って自分が仕事に取り組んでいることをアピールしようとしたという訳だ。
暇を持て余した多くの人は、普段はできなかった趣味のこともやり始めた。Netflixで映画を見たり、読もうと思って買ったのに読まないままになっていた本を読み始めてみたりと、そんな具合だ。でも、それでいいのだ。それこそが本来の家での過ごし方なのだから。
我々は「Just Do It」という価値観に囚われ過ぎている。対する「Let It Be」という価値観の方も、もっと大事にしてあげたほうが良い。