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人を完全に幸せな状態にしたらどうなるのか?

この世界のテーマはズバリ『苦しみ』である。人は苦しむために生まれてきたのだ。世間の人は良い事と悪い事は半分半分だと思っている。良い時もあれば悪い時もあると…… しかし実際には悪い事の方が多い。基本的にこの世界のステータスは全てがマイナス値を示していると思って差し支えない。

過去に『人を完全に幸せな状態にしたらどうなるのか?』という実験を実際にやってみた事があるらしい。美味しい食べ物、楽しい娯楽、暖かい部屋、フカフカのベッド、そういった空間に人を閉じ込めたら果たしてどうなるのか、という実験だ。

結果は悲惨だった。被験者にはものの数日で幻聴や幻覚が現れ、その酷い惨状を目の当たりにした科学者たちは実験を中止した。この実験、今では非人道的だとして全世界的に禁止されている。しかしこの実験から分かった事がある。それは、人は不幸な状況にいないと幸せを感じる事ができないという事だ。

全てが満ち足りた完全な幸せなどあってはならないのだ。それはこの世界の原理に反する事なんだ。それなのにそれを知らない世間の人々はメディアなどの作られた情報を真に受けて幸せを勝ち取ろうと躍起になっている…

死を免れた人間が一人もいない様に、苦しまずに生きれる人間もまた存在しない。貧乏人には貧乏人の切羽詰まった苦しみがあり、金持ちには金持ちのドロドロとした苦しみがある。だから我々は『苦しいという事から逃れる事など、誰にも出来ないのだ。』と知る必要がある。苦しむ事こそが生きるという事なのだ。