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クソみたいな世界に抵抗すると狂人になる

決して後ろ向きの意味ではなく、前向きな意味でこの文章を捉えてほしい。『この世界はクソッタレであった』それが私が長年考え続けて出た結論だ。

私が中学一年で引きこもりになった時、私には一種の人間不信が見られた。学校ではいじめも見られたし、下ネタも飛び交い、受験を意識した子供達で殺伐としていた。心も体も変わっていく過渡期の子供達。私は世界が今まで居た小学校とあまりにも違う事に戸惑った。私はピュアだったんだ。それがいけなかった。この世界は素晴らしく、学者や医者や政治家は、皆立派で凄い人たちなんだと本気で思っていた。

私は今の年齢になってようやく、この世界というものを受け入れる事が出来る様になった。思えばあの時、世界・人というものが判らなくなってしまったから私は頭がおかしくなったのだ。あの時から私は、この世界が素晴らしいものであるという事を肯定する為の材料を求め続けた。が、結局そんなものはなかった。

仏教では『この世には善も悪もなく、綺麗も汚いもない』と説くそうだ。私はこれに続きがあるような気がしてならない。それは『この世は、善と悪が混在しているのではない。しいて言うなら全てが悪なのだ。』という事だ。全てが等しく悪であるなら確かに善も悪も関係ない。その証拠に世界が素晴らしいものである根拠はいくら探しても見当たらないが、一方で世界がクソッタレであることの根拠はいくらでも見つかる。

思うにこの地獄そのものと言ってもいい世界を受け入れ、それを肯定した上でどうこの世界を生きていくか、それを考えるのが人生なのだろう。この地獄を受け入れられた人こそが、初めて一人前の大人と言えるのではないだろうか。

私の統合失調症という病気は、未だ医学的に原因と対策がはっきりしていない。現代の医療は、長い歴史の上から成り立つ経験や、偶然の発見により成り立っている。抗精神病薬の多くも、偶然の発見から実用化されたものが多い。人間誰しもがなりうる身直な病気であるにも関わらず、具体的なことは何もわかっていないのが現状だ。

人の頭が狂うその時、頭には過度なストレスがかかっている。一言にストレスと言っても人を狂わすほどのストレスとは一体なんなのか。その答えを、私は人生をかけて導き出した。それは私が今まで陥っていた状態と経験から知り得たことだ。

人は、今まで認識していた現実と、実際に直面した現実にあまりに差があり、困惑し、この世界を肯定出来なくなった時頭が狂うのだ。

思うに酷い拷問にあって頭が狂った人などもこのプロセスを経ておかしくなるのだろう。こんな地獄がこの世にあるのかという事、自分が生きてきた世界観を全てぶち壊され、なおこの世が悪で溢れている事実を拒否し『抵抗』する事、この状態に陥ると人間は狂ってしまうのだろう。

統合失調症は主に青年期に罹る病気だ。お爺さんになってから発症するという事は稀で、この事も私の説を裏付ける。高齢の人間はとうの昔にこの地獄を受け入れて生きてきた人たちだ。高齢になってから初めて私の言う狂うプロセスを辿るということは少ない。しかし青年期は違う。この世が地獄である事を初めて知る年齢層である。

また私にはないが、幻覚や幻聴などありもしないものを感じる症状というのは、自己の世界認識と現実の世界のギャップを埋める為の脳の防衛機能なのではないかと思われる。他に私の主な症状である妄想も、脳が世界認識をどうにか肯定すべくあれこれ試行錯誤している症状なのではないか。長く続いた私の引きこもり生活も、詰まる所脳が現実を受け入れる準備ができていないので、脳が現実と距離を保とうとした結果なのではないだろうか。

人間はピュアなままでは生きては行けないのかもしれない。子供がいずれサンタクロースの正体を知る事になるように、大人になるにはこの世が地獄であることを受け入れなければならない。非行少年や不良少女が大人になった時、案外逞しく生きていけるのは、人生の早い段階でこの地獄を受け入れたからなのかもしれない。

余談だが、最近では引きこもりやニート、会社をすぐ辞めてしまう新卒社員などはよく聞く話である。それらも根本の所ではこの私の話が影響しているのではないだろうか。大人や学校に守られ、何不自由なく漫画やネットに浸って育った人達は、地獄を受け入れる準備が遅れてしまうように思う。

最後に一つ言っておきたい。この世が地獄でも絶望する事などない。この世界はやりようによってはどうにでも自分好みに改変することができる。これも私が出した答えの一つだ。全てが嫌になったとしても、極端な話、僅かな金を持ってさえいれば、見ず知らずの遠くの土地へ行く事だって出来る。世界は広い。それは想像以上に広いということだ。どんなに頭で考えても到底見つからなかった物事に、いつどこで出会うか分からない。

私は今、身直な日常を改変すべく戦っている。家を掃除し、整え、家事が上手く回る様に工夫している。インドア派な私にはそれが合っている。そして私はそれで現実が自分好みに改変できると信じている。現在、地獄を受け入れ、その上に立って私は闘う。私は地獄を自分好みに改変すると誓う。